

滋賀県甲賀市・美冨久酒造が立ち上げた「三連星」は、祖父=渡船六号、父=山田錦、子=吟吹雪という三世代の酒米になぞらえてブランド名が付けられた、酸にこだわる新世代の純米酒シリーズ。今回向き合ったのは、吟吹雪を100%使ったスタンダードな「黒」の純米生詰原酒。精米歩合60%、アルコール17度の原酒らしい飲み応えがある。
グラスに注ぐと、控えめながらパイナップルや青リンゴを思わせる爽やかな果実のニュアンスが立つ。口当たりは原酒らしく密度が高く、甘みと旨みがしっかり乗ってくるが、それを後追いで支えるのが三連星の看板である明るい酸だ。トロピカルフルーツのような酸が中盤から効いてきて、原酒の濃さを重たくせず、最後はすっとキレていく。重厚さと軽快さが同居した設計が面白い。
日本酒度や酸度は黒の純米について公表値が見当たらなかったため、ここでは試飲の印象と原酒という条件から推定値(日本酒度+3前後・酸度1.8前後)として記している。数字を厳密に追う銘柄というより、「酸でまとめた濃醇旨口」というキャラクターで捉えるのが正しい。温度は冷酒(8〜12℃)で酸とフルーティさが最も映える。冷やしてこそのタイプで、温度が上がるとアルコール感がやや前に出てくる。
ペアリングは、脂と旨みのある料理。豚の角煮、餃子、鶏の唐揚げのように味の濃い一皿に対して、この酒の酸が脂を切り、料理の旨みと拮抗する。トマトを使った洋風の煮込みなど、酸×酸の組み合わせも意外と気持ちよくハマる。
価格は四合瓶で1,500〜1,900円ほど(実勢)。原酒でこの価格帯、しかも食事を選ばず合わせやすいとなると、家飲みのレギュラーに据えやすい。淡麗辛口が主流だった滋賀の地酒の中で、酸を軸に立たせた現代的な一本として記憶しておきたい。