

「環山(かんざん)」は、黒牛のラインナップの頂点に立つ純米大吟醸だ。兵庫県産の山田錦を100%使い、精米歩合45%まで磨き上げた最高級クラスで、定番の純米吟醸が「旨みと食事の相性」を狙うのに対し、環山は「香りと透明感」を一段引き上げた特別な一本に仕上げてある。黒ラベルの落ち着いた佇まいも含め、編集長としては贈答や記念日の食卓にこそ開けたい、蔵の看板を背負うグレードだと位置づけている。
香りは、純米大吟醸らしく伸びやかで清涼感がある。グラスからは白い花やライチを思わせる上品な吟醸香が静かに広がり、嫌味のない透明感を保ったまま立ち上がる。香りで圧倒するのではなく、すっと鼻に抜けていく端正さが環山の品の良さだ。
味わいは、日本酒度+1.0・酸度1.4という数字が示すとおり、辛すぎず甘すぎない絶妙なバランスに収まっている。45%まで磨いても黒牛らしい丸みと旨みはしっかり残っており、口に含むと滑らかな甘旨みが広がってから、スッキリと綺麗な後味で消えていく。雑味のない透明な飲み口で、純米大吟醸にありがちな線の細さがなく、旨みの芯がきちんと通っているのが名手酒造店の腕だ。能登杜氏・岡井勝彦氏が協会901号酵母で丁寧に醸した仕事の確かさを感じる。
ペアリングは、繊細で淡白な料理が映える。白身魚の刺身や鯛の昆布締め、湯葉、貝の酒蒸しといった素材の甘みを主役にする一皿に、環山の透明な旨みと吟醸香がそっと寄り添う。濃い味付けには負けてしまうので、上質な和食店のコースのように、料理側も品よく構えた席で開けたい。
価格は四合瓶(720ml)で実勢3,000〜3,300円ほど。日常の晩酌酒ではなく、ハレの日のための一本という価格帯だが、専用箱入りも用意されており贈答にも向く。黒牛の純米・純米吟醸でブランドの旨みを知った人が、最後に辿り着くべき頂点が、この環山だ。