

残草蓬莱(ざるそうほうらい)は、神奈川県愛川町の大矢孝酒造が醸す全量純米の銘柄。創業約200年、丹沢水系の伏流水を仕込み水にする蔵で、同蔵の上位銘柄「昇龍蓬莱」とは別ラインの銘柄になる。今回試した純米吟醸は山形産・出羽燦々を精米歩合50%まで磨いた定番SKU(このスペックを基準に記載)で、季節限定の「おりんごください」のような甘酸タイプとは方向性がまったく違う。
香りは穏やかで端正。出羽燦々らしい軽やかな吟醸香があり、青リンゴやハーブを思わせる清涼感が鼻に抜ける。派手さはないが冷えた瓶を開けた瞬間の透明感が心地よく、辛口酒の入口として好感が持てる。
一口含むと、日本酒度+5・酸度1.5の数値どおり、すっきりした辛口の骨格が立つ。米の旨みはきれいに乗るが甘みは抑えめで、含み香のあとに鋭いキレが訪れる。残草蓬莱は「キレる辛口」を芯に据えた造りで、レーダーでもキレを最高評価にした。後味の引き際がとにかく潔い。
温度は冷酒(8〜12℃)が最も得意。キンと冷やすと辛口のシャープさと出羽燦々の清涼感が際立つ。常温に戻すと旨みがやや顔を出すが、この酒は冷たい状態でこそ本領を発揮する。和食、特に淡い味付けの料理と合わせたときの相性が抜群だ。
ペアリングは白身魚の刺身、塩の天ぷら、焼き魚、冷奴。脂の少ない素材や塩味の料理に、このキレが気持ちよく効く。四合瓶1,400〜1,700円という価格は山田錦系の純米吟醸より手が届きやすく、神奈川の辛口純米吟醸として日常使いに勧めたい完成度の高い一本。