

齋彌酒造店の山廃技術を吟醸クラスで結晶させたのが、この「秘伝山廃 純米吟醸」だ。山田錦と秋田酒こまちを55%まで磨き、自社酵母を使った山廃仕込みで醸す。普及版の山廃純米(精米65%)が日常の燗酒だとすれば、こちらは磨きを一段上げて香味の透明感と山廃の幅を両立させた、シリーズの旗艦である。
香りはフローラルな吟醸香に、山廃由来のコクのあるニュアンスが重なる。口に含むと柔らかな入りから一転、山廃らしい旨みと厚みのある酸(酸度1.8)がじわりと広がり、長い余韻を残す。日本酒度+1.5でやや辛口に振れ、ボディの強さの割に後口はすっきりキレる。この緩急が「秘伝」の真骨頂だ。
精米55%という点では美酒の設計や定番純米吟醸と同じだが、山廃で仕込むことで方向性はまったく違う。速醸の純米吟醸が清涼なら、こちらは滋味と奥行きで勝負する。同じ蔵・同じ磨きでも、酛(もと)の作り方ひとつで個性がここまで分かれるのを体感できる一本だ。
温度の許容範囲が広いのも魅力で、冷酒では香りと酸のキレを、ぬる燗(40℃前後)では山廃の旨みのふくらみを楽しめる。焼き鳥の塩、牡蠣、チーズ、すき焼きといった旨みやコクの強い料理にしっかり拮抗する。
四合瓶で2,000〜2,400円。山廃の奥行きと吟醸の品を一杯で味わいたい人に勧めたい、雪の茅舎の個性が最も濃く出る銘柄だ。