

新政の実験精神を象徴するのが、この「亜麻猫」だ。通常の日本酒は黄麹で仕込むが、亜麻猫は焼酎づくりに使う白麹を一部に取り入れている。白麹はクエン酸を多く生み出すため、結果として日本酒離れした強い酸が立ち上がる。No.6が「酵母の個性」で世界を驚かせたのに対し、亜麻猫は「麹の選択」で味の地平を広げた一本といえる。
口に含むと、まず柑橘やヨーグルトを思わせる爽やかな酸が前に出る。酸度2.4という数値は日本酒としてはかなり高く、甘みと拮抗しながらレモネードのような清涼感をつくる。生酛由来の複雑さも背後にあり、ただ酸っぱいだけでは終わらない。アルコール13%の軽快さも手伝って、夏場にきりっと冷やして飲みたくなる設計だ。
Colorsシリーズが秋田の酒米と6号酵母の純粋さを追う「正統派」なら、亜麻猫はあくまで研究室から生まれた変化球。同じ蔵の中でも立ち位置がはっきり違う。白麹仕込みのスパークリング版「亜麻猫スパーク」もあるが、火入れの定番亜麻猫は酸の輪郭が最も素直に味わえるバージョンだと考えている。
ペアリングは酸を酸で受けるのが面白い。酢の物、マリネ、レモンを効かせた鶏料理。乳酸的なニュアンスがあるのでシェーブルチーズとも合う。逆に脂の強い料理より、さっぱりした前菜や中盤の箸休めに置きたいタイプだ。
流通量は限られ、定価2,500円前後に対して実勢はやや上振れする。それでも新政の世界観を「6号酵母」とは別の角度から知るには外せない。亜麻猫から入ると、後でColorsやNo.6を飲んだときに蔵の幅の広さが一段とよく分かる。