

三重県四日市市の伊藤酒造による「鈿女(うずめ)」は、鈴鹿山脈のふもとで1847年から続く蔵が手がける銘柄。蔵元直営のブランドとして近年知名度を上げてきた一本で、この「天女の舞」は三重県産の酒造好適米「神の穂(かみのほ)」を60%まで磨いた純米吟醸。
グラスに注ぐと、香りは控えめながら洋ナシやマスカットを思わせる穏やかな吟醸香。一口含むと、まず米由来のやわらかな甘みが舌の中央に乗ってくる。日本酒度-2のやや甘口設計が素直に伝わる味わいで、酸度1.6が下支えとなって甘さがべたつかず、軽快にまとまる。
アルコール度数が14度とやや低めに抑えられている点が、この酒の飲み口を決定づけている。重さがなく、食事と一緒にすいすい進む。冷酒(8〜12℃)で香りと甘みのバランスが最も整い、温度が上がると甘みがやや前に出てくるので、冷たい状態でキープしたい。
ペアリングは、繊細で塩気の穏やかな料理。白身魚の刺身、茶碗蒸し、湯豆腐、先付けの前菜あたりと素直に寄り添う。出汁の効いた和食との相性がよく、伊勢志摩の海の幸を思わせる組み合わせが楽しめる。香りも味も穏やかな酒なので、強い味付けの料理に合わせると埋もれてしまう。
四合瓶で1,800〜2,500円。蔵元直営ショップや三重県内の地酒店で出会える価格帯で、純米吟醸としては手に取りやすい。派手さで勝負するタイプではないが、やや甘口でやさしい三重の地酒を日常で楽しみたいときに置いておきたい一本。