

長州酒造の「天美」は、2020年に醸造を再開した蔵が世に問うた銘柄で、登場から数年で全国の地酒ファンが追いかける存在になった。白いラベルに金の箔押しという端正な装いだが、編集部として惹かれたのはやはり中身のほうだ。
栓を開けると、白ブドウやマスカットを思わせる穏やかな香りが立つ。派手に主張する吟醸香ではなく、料理の隣にそっと寄り添うタイプの香り方で、最初のひと口から「これは食事と合わせる酒だ」と分かる設計になっている。
味わいの軸は、やわらかな甘みとそれを引き締める酸のバランスにある。日本酒度は控えめのマイナス寄りで、口当たりはふくよか。けれど後半に柑橘のような酸が顔を出し、余韻はだらだらと残らずに収まっていく。甘いのに重くならないのは、この酸の働きが効いているからだ。
冷酒(8〜12℃)が最も表情豊かで、ワイングラスで供すると香りの輪郭がはっきりする。温度が上がると甘みの輪郭がやや緩むので、編集部としては冷やしたまま少量ずつ注ぐ飲み方を勧めたい。白身魚のカルパッチョや鶏の塩焼き、クリームチーズなど、塩気とコクのある一皿と相性が良い。
四合瓶で2千円前後と、品質に対して手の届く価格帯にある。入荷のたびに動きが早い銘柄なので見かけたら確保しておきたい一本で、山口の新世代を代表する造りとして押さえておく価値がある。