

山形市の秀鳳酒造場による「純米大吟醸 出羽燦々33%」は、山形県が独自開発した酒造好適米・出羽燦々を、その名にちなんで精米歩合33%まで磨き上げた一本。一升瓶でも3,000円台前半という思い切った価格設定で、「秀鳳を全国の日本酒ファンに知ってもらいたい」という蔵の姿勢が伝わってくる企画酒だ。720ml瓶で1,800〜2,200円前後と、純米大吟醸クラスとしては破格の実勢価格に収まる。グラスに注ぐとほぼ無色透明で、磨きの高さを思わせる澄み切った表情を見せる。
香りは派手すぎない上品な果実香。メロンや白桃を思わせる吟醸香が穏やかに立ち上がり、高精米らしい雑味のないクリーンな香り立ちが好印象だった。33%まで磨いた純米大吟醸にしては香りで押し切るタイプではなく、米由来の柔らかな甘い香りが軽やかに重なる。グラスに鼻を近づけると、磨きの効いた純度の高さが素直に感じ取れる。
味わいは、含むとまず柔らかな甘旨が舌の中央に乗り、続いて出羽燦々特有のふくらみのある旨みが広がっていく。日本酒度-1・酸度1.3というスペックの通り、甘辛は中庸でわずかに甘旨寄り、軽すぎず重すぎない端正なボディ。後半は穏やかな酸が支えてきれいにまとまり、高精米らしい透明感を保ったまま余韻へ移っていく。温度帯は冷酒(8〜12℃)で香りと甘みのバランスが最も整い、10℃を超えると米の旨みがふくらんで表情が変わる。
ペアリングは、白身魚の刺身や天ぷら、鶏の塩焼きといった淡い味付けの料理と素直に合う。クリーム系の前菜やチーズを使った軽い洋風料理とも、上品な甘みが寄り添ってくれる。香りが穏やかな分、強めの味付けに振り回されにくく、食中酒としての懐の広さがある。出羽燦々という山形らしい米の個性を、料理と一緒に楽しみたいタイプだ。
この価格でこの磨きと完成度を味わえる点が、何より魅力的な一本。純米大吟醸という言葉に身構えず、日常のなかで上質な甘旨を楽しみたい場面に向く。希少性や圧倒的な個性で勝負する銘柄ではないが、山形・出羽燦々の純米大吟醸の基準点として、コストパフォーマンスを重視する人にまず勧めたい良酒だ。なお秀鳳には雪女神やつや姫など複数の純米大吟醸があるが、本稿は最も入手しやすく価格も明快な定番SKU「出羽燦々33%」を対象に評価した。