

新潟県上越市の丸山酒造場が醸す「雪中梅(せっちゅうばい) 純米」は、新潟の地酒というと淡麗辛口を思い浮かべる人にとって、いい意味で予想を裏切る一本だ。日本酒度はマイナス5前後、酸度は2.0と高めで、新潟の中では珍しく甘口にはっきり振った設計になっている。地元・上越での晩酌酒として長く愛されてきた銘柄で、グラスに注ぐとやわらかく丸い香りが立ち上がる。
香りは派手な吟醸香ではなく、炊いた米や和菓子を思わせる穏やかで甘い含み香。鼻に抜ける印象がとにかく優しく、五百万石を63%まで磨いた純米らしいきれいさの中に、ふくよかな甘みの予感がある。冷やしすぎると香りが閉じてしまうので、少し温度を上げて飲みたいタイプだと感じた。
口に含むと、まず厚みのある甘みがふわりと広がる。日本酒度マイナス5の数字どおり、舌の上にとろりとした甘さが残るが、酸度2.0がしっかり効いているおかげで、ベタつかず後半に向けて自然に流れていく。アルコール度数は16.5度とやや高めで、その分だけ飲みごたえもある。辛口一辺倒の新潟酒に飲み疲れした人ほど、この甘酸のバランスにほっとするはずだ。温度帯は10〜15℃の冷やから常温あたりが好相性で、ぬる燗(40℃前後)に振ると甘みがいっそう膨らみ、また違う表情を見せる。
合わせるなら、しっかりした味付けの料理。甘辛い煮物やタレの焼き鳥、すき焼き、味噌田楽など、甘みのある和食と同調させると酒も料理も生きてくる。淡麗辛口の酒が「料理を立てる」方向だとすれば、雪中梅 純米は「料理と一緒に甘みを楽しむ」方向だ。淡白な刺身よりは、味の濃い一品と並べたほうが持ち味が出る。
価格は四合瓶で1,700〜2,200円ほどの実勢で、化粧箱入りで流通することも多く贈答にも向く。生産量がさほど多くないため見かけたら確保しておきたい一本だが、決して入手困難というほどではない。新潟=淡麗辛口という思い込みを一度外して、甘口の純米酒として向き合うと評価が変わる。万人向けの派手さはないものの、甘旨をゆっくり味わいたい晩酌に現実的に選べる完成度がある。