

上越市に蔵をかまえる妙高酒造は、霊峰・妙高山の名を冠した酒を1815年から醸し続けてきた老舗だ。今回試したのは定番の純米酒。派手な看板商品ではなく、日々の食卓に寄り添う一本として地元で愛されてきた酒で、こういう銘柄こそ蔵の地力が出ると考えている。
香りは控えめで、米と発酵由来の落ち着いた含み香があるだけ。一口含むと、五百万石らしい素直な旨みがふわりと広がる。新潟酒のなかでは淡麗一辺倒ではなく、ほどよい厚みを残した中庸な味わいだ。日本酒度+1、酸度1.6前後とバランスが取られており、甘すぎず辛すぎず、料理の横でちょうど良い位置に収まる。
この酒の美点は温度の懐の深さにある。冷やではキレが立ち、常温で米の旨みがふくらみ、ぬる燗(40℃前後)に振ると旨みと酸が一体になって膨らんでくる。冬場の食卓なら燗で本領を発揮するタイプで、一本で飲み方の幅を楽しめる。雪国の蔵らしく、燗で温まる酒という性格がよく出ている。
合わせるなら、出汁や醤油の効いた家庭料理。煮物、焼き魚、おでん、豚の角煮。濃いめの味付けにも酸とキレで応えてくれるので、晩酌の定番として頼りになる。冷やして刺身に合わせるよりも、温めて煮込み料理と向き合うほうがこの酒の持ち味が生きる。
四合瓶でおおむね1,300〜1,500円と日常使いしやすい価格帯。華やかさを競う一本ではないが、毎日飲んでも飽きず、燗にすれば季節を問わず楽しめる。家庭に常備しておきたい実直な純米酒だ。