

久保田シリーズの基本形にして、いちばん肩の力が抜けた一本が百寿。特別本醸造で精米歩合63%、日本酒度+6.0と、シリーズの中では最も磨きが浅く最も辛口寄りに振られている。吟醸の千寿、純米吟醸の紅寿、純米大吟醸の碧寿・萬寿と並べると、百寿だけがアルコール添加の本醸造で、性格もはっきり「日常酒」だ。
香りはほとんど立たない。立たせないことが狙いの酒で、含み香もごく控えめ。口当たりは軽く、甘みの主張はほぼなく、+6の辛口らしく喉の奥でスパッと切れる。酸度1.0と低めなのもあって、後にほとんど何も残らない。飲み飽きしない、という久保田の説明そのままの味わい。
精米歩合63%は、千寿の55%、碧寿・翠寿の50%、萬寿の33%と比べれば数字上は見劣りする。しかし百寿の役割は磨きで香りを立てることではなく、毎日の食卓に溶ける軽さを出すこと。本醸造ならではのキレの良さは、この浅めの精米とアルコール添加があってこそ成立している。
百寿が本領を発揮するのは燗。ぬる燗にすると辛口の角が取れて米の旨みがふわりと顔を出し、煮物や鍋、おでん、焼き魚といった出汁の効いた料理にぴたりと寄り添う。冷やよりも温めて真価が出るタイプで、その点でも純米吟醸の紅寿などとは楽しみ方が異なる。
四合瓶で1,100〜1,400円前後。久保田シリーズで最も手に取りやすい価格帯で、特別な日のための萬寿や碧寿とは対極にある、毎晩の燗酒として常備したい実用本位の一本。