

出羽燦々は、山形県が10年がかりで開発した県を代表する酒造好適米だ。県外の名米である山田錦や愛山ではなく、地元・山形の米で勝負したのがこの一本。高木酒造が拠点を置く山形の風土を、グラスの中にそのまま閉じ込めたような銘柄と言える。
50%まで磨いた純米吟醸は、十四代らしい甘みがはっきりと前に出るタイプだ。日本酒度はマイナス寄りで、口に含むと白桃やメロンを思わせる含み香とともに、まろやかでふくよかな甘みが舌に乗る。龍の落とし子のキレ重視とは正反対で、こちらは「甘旨」を全面に押し出したラインだと位置づけられる。
アルコール度数はやや高めの16度で、その分味わいに厚みと密度がある。それでいて重さは感じさせず、酸が下支えするおかげで後口はだれない。出羽燦々という米のやわらかい甘みと、十四代の華やかな香りが素直に重なった、わかりやすい美味しさが魅力だ。
ペアリングは白身魚のカルパッチョや湯葉、鶏の塩焼き、デザート代わりのフルーツなど。繊細で甘みのある食材と合わせると、酒の甘旨が料理を優しく包み込む。濃い味付けよりも、素材の甘さを生かした一皿に寄り添うタイプだ。
定価は四合瓶で3,500円前後。県産米を使った地元色の濃い一本でありながら、入手難易度と市場価格は他のラインと同様に高い。十四代の中で「甘さの心地よさ」を最も素直に味わえる銘柄を選ぶなら、この出羽燦々が候補に挙がる。