

木曽郡木祖村、標高の高い山あいで酒を醸す湯川酒造店。その代表ブランド「十六代九郎右衛門」の純米吟醸 美山錦は、IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)2023のSAKE部門でチャンピオン・サケに輝いた一本として知られる。生酛造りと長野県産美山錦を組み合わせた、蔵の看板といえる酒だ。
香りは派手な吟醸香というより、米と乳酸由来のふくよかさが前に出る穏やかなタイプ。口に含むと、生酛らしい厚みのある旨みがじわりと広がり、美山錦の引き締まった骨格がそれを支える。甘み・酸・旨みのバランスがよく、日本酒度は±0付近、酸度1.6前後と、ややしっかりめの食中設計だと感じた。チャンピオンに選ばれた所以は、この旨みの密度と飲み飽きしない均衡にあるのだろう。
温度を上げると本領を発揮する。冷やでは旨みが締まって端正だが、ぬる燗(40〜45℃)にすると生酛の旨みがふくらみ、余韻が長く伸びる。燗映えする純米吟醸は貴重で、寒冷地・木曽の酒らしい懐の深さを感じる。常温放置でも崩れにくく、扱いやすい。
ペアリングは、鴨ロースや豚の角煮といった旨みとコクのある料理がよく合う。焼き椎茸や熟成チーズなど、旨みの濃い素材とも響き合い、酒の厚みが料理を受け止める。淡白すぎる料理だと酒が勝つので、しっかりめのおかずを用意したい。
四合瓶で1,800〜2,200円前後。受賞銘柄としては手の届きやすい価格帯で、生酛純米吟醸の旨みと燗の楽しみを一本で味わえる。香りで華やぐタイプを探している人より、旨みと余韻を腰を据えて楽しみたい人に薦めたい。