

酒田酒造の「上喜元 翁(おきな)」は、毎年11月のみ出荷される季節限定の超人気酒。最大の特徴は、その年に仕込んだ純米大吟醸から本醸造までの酒を、出来具合を見ながらブレンドして仕上げている点にある。原料米と精米歩合は非公開という潔さで、雄町や出羽燦々のように「米で語る」レギュラー品とは設計思想がまるで違う。蔵の総合力をその年の一本に凝縮した「年に一度の答え合わせ」のような酒だ。日本酒度+2、酸度1.3、アルコール15度。精米歩合は公称非公開のため、ここでは大吟醸クラスを含むブレンドという特性から代表値55%として扱う(購入時は店頭表示で要確認)。
開栓すると、新酒らしい清涼感とともに、果肉を思わせるフレッシュで甘やかな果実香がグラスいっぱいに立ち上がる。一口含むと、上位スペックがブレンドされているだけあって含み香に厚みがあり、+2のほぼ中庸な甘辛バランスで旨みがふくらむ。アルコール15度とやや低めで口当たりは軽やか、それでいて満足度は価格の倍はあるという評判どおりの密度がある。
温度は冷酒(8〜13℃)で香りとフレッシュさを楽しむのが基本。出荷直後の新酒らしいガス感が残ることもあり、まずは冷やして開けたい。
ペアリングは幅広く、冬の食卓全般。鍋もの、刺身の盛り合わせ、塩の焼き鳥、ぶり大根。年末の集まりに一本あると場が華やぐタイプだ。
非公開・ブレンド・年一回という条件が揃った、上喜元の「お祭り銘柄」。レギュラー品で蔵の実力を確かめたうえで、11月にこの一本へ進むのが楽しい飲み方だった。