

酒田酒造「上喜元 純米吟醸 超辛 完全発酵」は、日本酒度+15という尖った辛口を看板に掲げた一本。原料米は五百万石、精米歩合50%。「完全発酵」の名のとおり、糖をぎりぎりまで発酵させ切ることで甘みを削り、極端な辛口に仕上げている。雄町の濃醇さとも出羽燦々の素直さとも違う、同じ蔵の「振り切った設計」を見るための銘柄として試した。四合瓶1,500〜1,800円とコスパも高い。
香りは控えめで、吟醸香はほとんど前に出ない。一口含むと甘みがほぼ感じられず、五百万石の淡い旨みが一瞬よぎった直後、+15らしい強烈なキレで一気に流れ去る。酸度1.3で過度に酸っぱくはならず、辛さの方向に全振りした潔い味。後味はからりと乾いていて、盃が止まらない危険な飲み口だ。
温度は冷酒(8〜12℃)でキレを際立たせるのが王道だが、ぬる燗(40〜45℃)にすると旨みが少し顔を出し、辛口の輪郭がやわらぐ。両方試す価値がある。
ペアリングは、塩で食べる料理や脂を切りたい場面。白身魚の塩焼き、牡蠣、塩の天ぷら、冷奴。料理の脂や塩気をこの辛口がすっと流してくれる。
甘口・旨口が主流の今の地酒シーンで、ここまで辛さに振った純米吟醸は珍しい。「淡麗辛口の現代版」を山形の蔵が真面目に作ったらこうなる、という見本のような一本だった。