

鶴岡の冨士酒造が四季醸造で毎月送り出す「栄光冨士」シリーズの中でも、十四代の高木酒造が育種した酒造好適米「酒未来」を使ったこの一本は、近年特に注目を集めている。無濾過生原酒ならではの濃密な果実感を、編集部としても改めて確かめてみた。
栓を抜いた瞬間、ライチや白桃を思わせる甘やかな香りが立ち上る。日本酒度マイナス8という数字どおり、口に含むと最初に来るのは熟した果実のような甘み。生原酒らしいとろみと厚みがあり、アルコール16度台ながら飲み口は驚くほどジューシーだ。
一般に「甘口=ぼやける」という先入観を持たれがちだが、酸度1.7がしっかり下支えしているため、甘さが間延びせず後半で輪郭が締まる。生原酒なので開栓後は冷蔵庫で立てて保管し、数日かけて味の変化を追うのも楽しい。冷酒(8〜10℃)で香りと甘みのバランスが最も整う。
ペアリングは、甘みを生かして果物を使った前菜やクリーム系のチーズと合わせると一体感が出る。逆に塩辛い珍味や濃い味付けの煮物に合わせると、酒の甘みが浮いてしまうので避けたい。鶏の塩焼きのような素直な旨みの料理が無難に寄り添う。
価格は四合瓶で2千円台前半と、無濾過生原酒の純米大吟醸としては手に取りやすい。甘口の生原酒が好きな人にとっては家飲みのローテーションに組み込みやすく、日本酒度の振れ幅を体感する入口としても勧められる。月替わりで銘柄が変わるシリーズなので、見かけたタイミングで確保しておきたい性格の酒だ。