

出羽桜酒造の「枯山水(かれさんすい)」は、1984年から造り続けられている熟成酒のシリーズ。なかでも標準にあたる三年熟成は、本醸造を−4℃の低温で三年寝かせた大古酒で、出羽桜の香り系ラインとは完全に方向性の異なる一本。桜花吟醸や一路がフレッシュな吟醸香を競う酒だとすれば、枯山水は時間が作る熟成香と深みで勝負する、蔵のもう一つの顔と言える。
色はうっすらと琥珀がかり、香りはナッツやドライフルーツ、わずかにカラメルを思わせる熟成香。美山錦・雪化粧を55%精米で仕込み、低温熟成で角を落としているため、口当たりはまろやかでとろみすら感じる。日本酒度+5の辛口骨格に、三年分の旨みとコクが重なり、余韻が長く尾を引く。フレッシュな吟醸酒とは別の軸にある「熟成の旨み」を味わうための酒で、ここがラインナップ内での明確な差別化点になる。
飲み方の幅が広いのも熟成酒の魅力。常温でコクを味わい、ぬる燗〜熱燗にすると熟成香と旨みが一気に開く。冷やすと輪郭が締まるので、料理に合わせて温度を選べる。
ペアリングは、コクや脂のある料理。鴨ロース、鶏レバー、中華の炒め物、熟成チーズ。淡白な料理より、熟成香に負けない濃いめの一皿とよく合う。
四合瓶で1,700〜2,200円。熟成酒としては手に取りやすい価格で、古酒の入門としても良い。香り系の出羽桜に慣れた人が、同じ蔵の振れ幅を知るために飲んでおきたい一本。