

獺祭シリーズの頂点に立つのが、この「磨き その先へ」だ。最高峰とされてきた磨き二割三分を、さらにその先へ超えていくという思想で造られた特別な一本。精米歩合などの細かい数値は非公開とされており、ここで記したスペックは二割三分系の上位酒としての特性から導いた編集部の推定値である点を、先に断っておきたい。
二割三分が「透明感の極致」だとすれば、その先へが目指すのは「複雑さ」だ。グラスに注いだ瞬間の吟醸香は二割三分と同じく端正だが、口に含むと味の層が一段も二段も厚い。最初に上品な甘みが立ち、その奥から米の旨みが幾重にも重なって現れる。二割三分が一直線に研ぎ澄まされているのに対し、こちらは奥行きと膨らみで魅せる。
特筆すべきは余韻の長さだ。二割三分がすっと消えていく美しさを持つのに対し、その先へは飲み込んだあとも香味が口中に長く留まり、ゆっくりと変化しながら消えていく。冷酒(8〜12℃)で開く香りはもちろん、わずかに温度が上がったときに顔を出す複雑味こそが、このSKUの真骨頂だと感じている。
ペアリングは料理を選ぶ。ふぐの白子やキャビア、白トリュフを使った料理など、それ自体が複雑で繊細な高級食材と合わせてこそ釣り合う。淡白すぎる料理だと酒が勝ってしまい、濃すぎる料理だと余韻が消える。コース仕立ての高級和食の中で、ここぞという一品に寄り添わせるのが最も美しい。
四合瓶で4万円近いという価格は、もはや日常の文脈にはない。贈答や記念日、人生の節目といった「特別な一夜のための酒」だ。二割三分で獺祭の頂を知った人が、さらにその先を確かめたくなったときに開ける、文字通り頂上の一本である。