

横手市の大納川は、いったん途絶えかけた蔵を再興し「天花」というブランドで再出発した、秋田の中でも比較的若い動きのある蔵だ。蔵付き酵母D-29・D-121を使い分けるのが特徴で、今回はその「天花」シリーズから、秋仕込みの純米吟醸を開けてみた。
グラスに注ぐと、りんごやパイナップルを思わせる果実香が華やかに立ち上がる。一口含むと、まず甘みとジューシーな旨みが広がり、続いて酸度2.5という数字どおりのしっかりした酸が全体を引き締める。日本酒度はマイナス側の甘口設計だが、酸が効いているため、だらけた甘さにはならず、むしろ瑞々しい印象でまとまっている。
冷酒(8〜12℃)で香りと酸のバランスが最もきれいに出る。温度が上がると甘みが前に出て、酸とのコントラストがやや緩むので、低めの温度をキープして飲むのがおすすめだ。香り系の純米吟醸が好きな人に素直に刺さる、わかりやすい果実感のある一本といえる。
ペアリングは、酸がしっかりあるぶん油の料理に強い。鶏の唐揚げや豚の角煮といったこってり系を軽やかに流してくれるし、きのこのソテーのような旨みのある一皿とも好相性。甘酸のバランスを活かして、フルーツを使った前菜と合わせても面白い。
四合瓶で2千円前後と、この香りと完成度を考えれば納得の価格帯。蔵付き酵母由来の華やかさと、はっきりした酸の骨格を併せ持つ、再興蔵らしい意欲を感じる一本だ。