

萬燿は、伊豆の万大醸造が手がける地酒。万大醸造は伊豆で唯一の地酒蔵元で、日本酒のほか焼酎やリキュールも醸す蔵だ。今回向き合った純米吟醸は、静岡県農林技術研究所が7年をかけて育成した静岡県初の酒米・誉富士を100%使い、60%まで磨いた一本。仕込み水には宇佐美山系の湧水(軟水)を使い、静岡酵母HD-1と自社酵母を併用している点が特徴になる。
香りは、静岡酵母らしい穏やかでありながら、純米吟醸としての華やかさもきちんと感じられる立ち方。リンゴや洋梨を思わせる果実香に、誉富士由来の含み香が重なる。派手すぎず地味すぎず、香りで料理を邪魔しないギリギリのところで吟醸香を効かせてくる、静岡らしいバランス感覚の香りだと感じた。
一口含むと、誉富士の米の旨みがふくらみ、日本酒度プラス2・酸度1.4の数値どおりに甘辛中庸でまとまる。旨みのあとに酸がきれいに乗ってキレていくので、後口は重くならない。軟水仕込みらしい柔らかな口当たりと、誉富士特有の旨みのふくらみが両立していて、香り・旨み・キレのバランスが取れた純米吟醸らしい仕上がり。温度帯は冷酒(8〜12℃)で香りを楽しむのがおすすめで、上げすぎると吟醸香が散りやすい。
ペアリングは、白身魚の刺身や鶏の塩焼き、あじのなめろう、塩で食べる天ぷらといった淡めの和食とよく合う。誉富士の旨みが料理の繊細さを邪魔せず、酸が口中をリセットしてくれるので食中酒として回しやすい。香りに華やかさがある分、白身魚のカルパッチョなど洋の前菜に寄せても無理がない柔軟さもある。
価格は四合瓶で実勢1,500〜1,900円前後。静岡県産の誉富士を100%使った純米吟醸を、この価格帯で楽しめるのはコストパフォーマンスの面で評価できる。伊豆唯一の蔵という背景も含めて、静岡酵母×誉富士という県内らしい組み合わせを味わいたい人に勧めたい一本。華やか系と淡麗系のちょうど中間を探している人に向く。