

Colorsシリーズの中で、華やかさと厚みを担うのが「天鵞絨(ヴィリジアン)」だ。天鵞絨はビロードを意味し、その名のとおり口当たりの滑らかさが身上。使う酒米は秋田生まれの希少米「美郷錦」で、山田錦と美山錦という二大スターを親に持つ。精米歩合50%の扁平精米を施し、米の芯と旨みが両立する点を新政が高く評価している米だ。
飲むと、エクリュよりも一段ふくらみのある旨みと、ほのかな上立ち香が感じられる。美郷錦由来のボディがしっかりあり、生酛らしい酸が後半を引き締める。それでいてアルコール13%の原酒とは思えない軽やかさで、ビロードという比喩がしっくりくる滑らかな喉ごし。Colorsの中では「ごちそう寄り」の表情を持つ一本だ。
シリーズで比べると、酒こまちのエクリュが清楚、改良信交のコスモスが柔和、そして美郷錦のヴィリジアンが立体的で華やか、という米ごとの個性差がはっきり出る。同じ生酛・木桶・6号酵母でも、米一つでここまで景色が変わるのかと驚かされるのがColorsを飲み比べる醍醐味だ。
ペアリングは旨みと香りに見合うものを。天ぷら、ホタテのソテー、鶏の治部煮、軽いクリームを使った前菜。出汁にバターやオイルが少し絡む料理まで受け止める懐の深さがある。冷酒で香りを楽しみつつ、少し温度を上げると旨みがさらに開く。
希少米ゆえに数量は限られ、実勢価格はエクリュよりやや高い。それでも新政が描く「秋田の米の地図」を味で確かめるなら、ヴィリジアンは外せない座標の一つだと思っている。