

千葉県富津市の小泉酒造は寛政5年(1793年)創業の老舗で、鹿野山の伏流水で仕込む上総の蔵。看板銘柄「東魁盛」の純米吟醸五百万石は、酒米の五百万石を55%まで磨いた、端正な食中酒タイプだ。派手な流行とは距離を置き、料理に寄り添う酒を造る蔵の姿勢が素直に出ている。
香りは穏やかで、五百万石らしいすっきりとした含み香。吟醸香はおとなしく、香りで主張するというより、口に含んでからの旨みで聴かせるタイプ。一口含むとなめらかな口あたりののち、米の旨みが過不足なく広がり、後半は綺麗な酸とともにすっと切れていく。日本酒度+3、酸度1.4のバランスで、辛口寄りながら痩せた印象はなく、余韻に米の甘みがほのかに残る。
温度の自由度が高いのが五百万石の純米吟醸らしいところ。冷酒(10℃前後)ではキレと清涼感が立ち、常温では旨みがふくらむ。ぬる燗(40℃前後)にすると旨みと甘みが開き、燗映えする懐の深さを見せる。一本で表情を変えられるので、料理や季節に合わせて温度を選びたい。
ペアリングは和食の定番が中心。刺身、焼き魚、煮物、おでんなど、出汁や醤油の効いた料理によく寄り添う。味の主張を抑えた設計ゆえ、素材を生かした料理から濃いめの煮物まで幅広く受け止める。脂を酸が流してくれるので、焼き魚との相性は特に安定している。
四合瓶でおおむね1,500〜1,900円。富津・房総エリアを代表する食中酒として、観光土産にも晩酌にも収まりが良い。老舗が淡々と造り続ける、過不足のない一本。流通も比較的安定しており、千葉の食中酒を試す入り口として薦めやすい。