五人娘 純米
千葉県

五人娘 純米

蔵元: 寺田本家
純米 原料米: 美山錦ほか 精米歩合 70%
★ 4.3
★★★★・
編集長 丸山評価

スペック

日本酒度
-1
酸度
2.0
アルコール度数
15%
価格目安
1,500〜1,900円
味わいレーダーチャート
香り甘みキレ余韻個性
4象限ポジション
辛口甘口淡麗濃醇 爽快・キレ系穏やか・優しい系どっしり辛口芳醇・甘口

料理ペアリング

もつ煮 発酵食品(味噌・漬物) 煮物 すき焼き

この銘柄のタグ

編集長レビュー

編集長 丸山
日本酒愛好家・延べ1000銘柄を試飲

千葉県香取郡神崎町、寛永年間に創業したとされる寺田本家による「五人娘 純米」。無農薬米と生もと造り、無添加にこだわる自然酒の蔵として全国に知られ、この銘柄はその看板であり原点にあたる定番だ。名は詩人・土屋文明が蔵で見た娘たちの記憶から名付けたと伝わる。グラスに注ぐと、わずかに色を帯びた液体が現れる。透明で華やかな現代吟醸とは対極の、発酵そのものの匂いを感じさせる骨太な一本という第一印象だ。

香りは穏やかながら一筋縄ではいかない。生もと由来の乳酸系の酸を背景に、ヨーグルトや穀物、ほのかな酸味のニュアンスが立ち上がる。蔵付きの天然乳酸菌と蔵に棲む酵母を生かし、添加物を使わずおよそ一か月かけて自然発酵させる造りに由来する香りで、華やかさで売る酒ではないと一杯目から分かる。鼻で探すより、口に含んでから個性を確かめるタイプだ。

味の中心にあるのは、米を70%に磨いた純米らしい濃厚な旨みと、それを引き締める高めの酸。酸度2.0前後という数値どおり、甘ったるさはなく、酸が旨みを支える構造で骨格はしっかりしている。本領は温度を上げてから現れる。冷や(10〜13℃)では酸が前に出て輪郭がやや硬いが、ぬる燗(45〜50℃)に上げると隠れていた旨みと甘みがふくらみ、酸が丸くなって滋味が前面に出る。熱燗(55℃)でも香りが暴れず、米の力強さが素直に伸びる。冷やよりも燗で完成する、生もと純米の手本のような設計だ。

ペアリングは、コクと発酵の風味を持つ料理。もつ煮、味噌や漬物といった発酵食品、煮物、すき焼きといった味付けのしっかりした肴に、生もとの酸と旨みが共鳴する。淡麗な刺身を冷酒で合わせるより、火を入れた濃いめの料理や発酵食品を燗で迎える使い方が断然似合う。酒と肴の発酵同士が重なって、互いの旨みを押し上げてくれる。

価格は四合瓶でおおむね1,500〜1,900円(720ml実勢)。万人受けする華やかさはないが、無農薬米と生もと、無添加という今では希少な造りをこの価格で日常に置けるのは貴重だ。華やかな吟醸酒を入口にした人が「発酵と燗で開く自然酒」へ一歩進むとき、基準点として手元に置きたい、千葉が誇る個性派の純米として推せる。