

倉敷市児島の十八盛酒造が、地元岡山の象徴ともいえる雄町を68%まで磨いて仕込んだ純米の無濾過生原酒。精米歩合を欲張らず、米そのものの輪郭を残す設計に、編集部としても腰を据えて向き合ってみた。
グラスに注ぐと、淡い山吹色のにごりを帯びた液面から、蒸した穀物や栗を思わせる落ち着いた香りが立つ。雄町らしい押し出しの強い旨みが最初の一口から舌に乗り、酸度2.1が骨格を支えるため、ふくよかでありながらだらけない。生原酒ゆえアルコール感はしっかりめだが、無濾過特有のざらりとした厚みが心地よく、飲み進めるほど雄町の輪郭がはっきりしてくる。
日本酒度+4という数字以上に甘辛のバランスは旨口寄りで、味の重心は明確に下にある。冷やしすぎると旨みが閉じるので、12〜15℃あたりで雄町の膨らみを開かせるのが良い。ぬる燗にすると酸と旨みが一体化し、また別の表情を見せる。一本で温度違いの楽しみが完結するタイプだ。
ペアリングは、淡白な料理より味の濃い煮込み系が合う。牛すじや豚の角煮、濃口で炊いた根菜の煮物など、油と醤油のある皿を相手にすると、酒の酸が脂を切りつつ旨みで受け止める。塩気の効いた熟成チーズとも好相性で、食中から食後まで居座れる。
四合瓶で2,000円前後という価格は、この個性に対してむしろ控えめに感じる。要冷蔵の管理は必要だが、雄町の濃さを家飲みで体感したい人にとって、最初に手を伸ばすべき一本といえる。