

写楽は同じ純米吟醸でも使用米ごとに性格を作り分ける蔵で、その違いを最も雄弁に語るのが、この備前雄町を使った一本だ。岡山県産の雄町は「オマチスト」と呼ばれる熱狂的なファンを生む米で、写楽の手にかかると、その個性がさらに研ぎ澄まされる。
精米歩合は50%、アルコール16%。スペックは標準的な純米吟醸と同じだが、出てくる酒質はまるで別物だ。基準となる夢の香バージョンが端正で線が細いのに対し、雄町版は明らかにふくよかで、味の幅が横に広がる。
香りは雄町らしい落ち着いた果実香で、メロンやマスカットというより、やや熟れた果実を思わせる。口当たりは柔らかく、中盤で米由来の厚い旨みが押し寄せ、余韻が長く尾を引く。酸は1.6前後とやや高めに取り、ボリュームのある味わいを後半で受け止める設計になっている。
このコクの強さゆえ、ペアリングも濃いめの料理が映える。豚の角煮、鴨ロース、熟成チーズ、きのこのソテー。淡麗な料理に合わせると酒が勝ってしまうので、油や旨みのある皿と組むのが正解だ。
四合瓶の実勢はおおむね2,800〜4,000円。山田錦版の端正さとは対極にある「旨み主体の写楽」として、飲み比べに必ず入れたい一本である。