

写楽の純米大吟醸というと最上位の極上系を思い浮かべる人が多いが、この特別限定 純米大吟醸は少し毛色が違う。もともと2020年の国際線ビジネスクラス向けに造られた酒が、世の中の混乱で行き場を失い、市販に回ったという経緯を持つ。いわば「飲めるはずではなかった写楽」だ。
使用米は五百万石、精米歩合は50%。純米大吟醸を名乗りながら磨きは50%に留めており、35%まで磨き込む極上系とは設計思想が異なる。米の旨みをあえて残し、香りに頼りきらない大吟醸という、写楽らしい引き算の造りだ。
口に含むと、まず大吟醸らしい清らかな含み香が広がり、続いて五百万石由来の控えめながら芯のある旨みが現れる。日本酒度は+1前後、酸は1.4と低めで、後味は驚くほど綺麗に切れる。華やかさと食中酒としてのキレが高い次元で両立している。
機内食を想定して造られただけあって、ペアリングは繊細な料理が映える。白身魚のカルパッチョ、帆立の刺身、鮨、出汁巻き卵。塩や酸でまとめた軽やかな皿と合わせると、この酒の透明感が際立つ。
四合瓶の実勢はおおむね3,500〜4,500円。極上系ほど高価ではなく、純米大吟醸としては手の届く価格で、写楽の上位の世界を覗くのに格好の一本。背景の物語ごと味わいたいSKUである。