

向井酒造は京都・丹後の伊根町、舟屋が海に並ぶ漁港の集落にある。日本で最も海に近い蔵のひとつと言われ、杜氏は京都で初の女性杜氏となった向井久仁子さん。この土地の空気を知ってから飲むと、京の春という酒の像がぐっと立ち上がってくる。
純米 祝は、京都生まれの酒米「祝」を65%精米で使った辛口の食中酒。香りは控えめで、米の含み香が鼻に抜ける程度。口当たりはすっきりとして、日本酒度+5らしいキレの良さが前に出る。甘さに頼らず、酸が骨格を支えているので飲み飽きしない。
冷やでシャープに、常温で旨みをふくらませて、と温度で表情が変わる。個人的には冷蔵庫の温度から少し戻した10℃前後が好み。海辺の蔵という出自どおり、魚介と合わせると本領を発揮する酒だと感じた。
刺身の盛り合わせ、焼き魚、干物、そして丹後といえば蟹。淡白な白身から脂ののった青魚まで幅広く受け止め、後口の酸が魚の余韻をきれいに流してくれる。塩で食べる料理との相性が特にいい。
四合瓶で二千円前後。小さな蔵で生産量も多くないため、見かけたら手に取っておきたい。観光地としての伊根の人気もあり、現地で蔵を訪ねて買うという楽しみ方もできる一本だ。