

ハクレイ酒造は丹後半島の付け根、由良岳のふもとで江戸時代から続く蔵だ。仕込み水は名水百選にも数えられる軟水を使う。香田はその蔵が、地元・京都産の山田錦を契約栽培して醸す特別純米。減農薬で育てた米という背景が、飲む前から好印象を与える。
掛米は70%精米とあえて磨きを控えめにしており、米の旨みを残す設計。香りは穏やかで、含むと柔らかな甘みと出汁を思わせるふくらみが広がる。日本酒度+3でやや辛口に振れるものの、軟水仕込みらしい丸い口当たりがそれを包み込む。酸度1.5が後半の輪郭を引き締める。
この酒の真価は温めたときに出る。ぬる燗から上燗にすると米の甘みと旨みがほどけ、温度が下がっていく過程でも崩れない。冷やでも飲めるが、香田は燗酒として向き合うほうが個性が伝わると感じた。
合わせるなら、家庭の煮物や揚げ物。天ぷら、肉じゃが、鶏の照り焼き、寒い日のおでんといった、出汁や醤油を使った日常のおかずにすっと馴染む。料理を引き立てる脇役に徹してくれるタイプだ。
四合瓶で二千円を切る価格は、燗酒の常備銘柄として頼もしい。派手さはないが、地元の米と水で素直に造られた酒の良さがある。丹後の食卓の日常を、そのまま瓶に詰めたような一本だ。