

酒米の王・山田錦を、あえて80%という低精米で仕込んだのが「山田錦 807」だ。山田錦といえば大吟醸を思い浮かべるが、風の森はその常識をひっくり返す。磨かない山田錦から何が出るのか——その答えが、807シリーズのなかでもっともキレの立った、辛口寄りの一本である。雄町の甘旨、露葉風の複雑味に対し、この山田錦はシャープな後口で差別化されている。
兵庫県産山田錦を100%使用。無濾過無加水生酒の瑞々しいガス感から入り、80%精米とは思えないほど雑味のない味わいが続く。山田錦由来の品の良い旨味がありつつ、後半はすっと引いていく。低精米ゆえのふくらみと、山田錦本来のキレ味が両立している点がこの酒の妙で、807シリーズの「米を磨かず複雑味を出す」思想を、もっとも端正な形で表現していると言っていい。
日本酒度・酸度は非公開のため、シリーズ内で最も辛口寄り・キレ重視という性格に整合する代表値として、日本酒度+3前後・酸度1.7前後を採用した。アルコール17%と飲みごたえは十分。冷酒(8〜12℃)でキレを活かすのが基本だが、温度を上げても骨格が崩れず、旨味とキレのバランスが保たれる。食中酒としての安定感はシリーズ随一だ。
ペアリングは繊細な和食が映える。白身や光物の刺身、焼き魚、出汁巻き卵、ざる蕎麦。キレのよい後口が魚の脂や出汁の余韻を上品に整え、次の一口を呼ぶ。甘旨で押すより、料理に寄り添って消えていくタイプの食中酒だ。
四合瓶1,500〜1,800円。同じ磨き・同じ蔵でも、雄町は甘旨、露葉風は複雑味、そしてこの山田錦はキレ——三者を並べると、米の違いが味の方向そのものを決めることがよく分かる。807飲み比べの「キレ担当」として一本そろえておきたい。