

「雄町 807」は、岡山県産の雄町を80%精米で仕込んだ風の森の人気銘柄だ。雄町は数ある酒米のなかでも旨味の出やすい品種として知られ、これを磨かずに使う807シリーズの思想と相性が抜群にいい。同じ807でも、露葉風の渋み・酸の個性、山田錦のキレに対し、この雄町は甘旨の押し出しがいちばん豊かなラインに位置づけられる。
無濾過無加水生酒らしいフレッシュなガス感が口火を切り、そこから雄町ならではのまろやかでふくよかな甘味が一気に広がる。80%という低精米にもかかわらず雑味は驚くほど少なく、むしろ磨きを抑えたことで雄町本来のコクが素直に乗っている。立ち香は控えめで、香りで主張するより味の厚みで魅せるタイプ。仕込み水は金剛葛城山系の超硬水で、ミネラル由来の発酵力がこの密度を支えている。
蔵元は日本酒度・酸度を公表していないため、ふくよかな甘旨と程よいキレという飲用バランスから、日本酒度0前後・酸度1.8前後を代表値として置いた。アルコール16%。冷酒(8〜12℃)で甘味とガス感の対比を楽しむのが王道だが、雄町の旨味は温度が上がるほど開くので、少し置いてから味の変化を追うのも面白い。
ペアリングは甘旨に厚みのある料理が合う。割り下の効いたすき焼き、うなぎの蒲焼、コクのあるチーズ、豚の生姜焼き。甘味どうしがぶつかると思いきや、ガス感と酸が脂を流してくれるので、こってり系をむしろ軽快にまとめてくれる。
四合瓶1,500〜1,800円。807シリーズのなかでも入りやすい甘旨タイプで、低精米路線の魅力を最初に体感するならこの雄町が分かりやすい。露葉風・山田錦と並べて飲めば、「磨き方が同じでも米でここまで変わる」という風の森の面白さがはっきり見えてくる。