

純米大吟醸 広島錦は、賀茂鶴酒造の純米大吟醸ラインの中でも、原料米にこだわった土地の酒だ。名前のとおり、広島県が育成した酒造好適米「広島錦」を100%使い、38%まで磨き上げている。山田錦を使う双鶴が「磨きの極致」を追う酒だとすれば、こちらは広島の米で広島の酒を醸すという、地酒としての一貫性を打ち出した一本。2023年5月のG7広島サミットのワーキングディナーで提供されたことでも知られ、いまや賀茂鶴の「顔」のひとつになっている。
栓を開けると、純米大吟醸らしい上品な吟醸香が立つ。双鶴のような押し出しの強い果実香とはタイプが違い、白い花や青リンゴを思わせる、ややおだやかで端正な香り立ちだ。広島錦という米の個性なのか、香りに軟水仕込みらしいやわらかさが乗り、華美すぎない品の良さがある。純米ならではの、米の存在感を残した含み香も心地よい。
口に含むと、純米大吟醸らしい厚みのある旨みが、なめらかに広がる。日本酒度は+2前後と見られ、甘辛のバランスは中庸からやや辛口。38%まで磨いた米の透明感と、純米由来のふくよかな旨みが両立し、軽すぎず重すぎない中庸の味わいに仕上がっている。後口は酸でほどよく締まり、余韻に米の旨みを残しながらきれいに引く。広島の軟水醸造が育てた、角の取れた純米大吟醸という印象だ。
温度は冷酒(8〜12℃)で香りと旨みのバランスが最も整う。よく冷やせば香りが端正に締まり、少し温度を上げると米の旨みがふくらむので、温度で表情の変わる懐の深さもある。ペアリングは地元・瀬戸内の白身魚や牡蠣の天ぷら、穴子の白焼きといった広島らしい肴のほか、鶏の治部煮のような出汁の効いた料理にも純米の旨みでよく合う。
編集長丸山としては、広島錦は「土地の物語ごと味わう」純米大吟醸として勧めたい。同じ蔵でも、山田錦を磨いた双鶴が普遍的な最高峰を目指すのに対し、広島錦は広島の米にこだわった地酒志向。G7の舞台に上った一本という話題性もあり、広島の地酒を贈り物や記念の席に選ぶなら、有力な候補になる純米大吟醸だ(※スペックの一部は公開情報をまとめたもの)。