

宝剣酒造の「宝剣(ほうけん)」の中でも、辛口という蔵の個性を最も先鋭化させたのがこの超辛口純米だ。同じ八反錦・精米歩合60%を使う定番純米が日本酒度+4でバランス型なのに対し、こちらは+10まで振り切っている。編集部としても、宝剣の「キレ」という看板を文字どおり体験するなら、まずこの一本だと言いたい。
香りは極めて控えめで、米の落ち着いた香りがわずかに立つ程度。華やかな吟醸香を期待する酒ではなく、香りで主張しない潔さがこの酒の設計思想を物語っている。グラスを傾けても余計な装飾がなく、輪郭がすっと立つ。
含むと、八反錦由来の軽快な口当たりから米の旨みがわずかに顔を出し、そこへ日本酒度+10・酸度1.6の鋭い骨格が一気に切り込んでくる。定番純米の+4と比べると後半の収束が明確に速く、甘みはほとんど余韻に残らない。ただ辛いだけの酒ではなく、宝剣名水由来の柔らかさが角を丸め、辛さと旨みが拮抗したところで料理を待ち構える。冷酒でキレが冴え、ぬる燗にすると旨みがふくらんで辛さの輪郭がやわらぐ二面性も持つ。
ペアリングは脂や塩気のある料理に強く、焼き牡蠣や白身魚の塩焼き、鶏皮ポン酢、穴子の天ぷらなどの後味をすっきり洗い流す。八反錦純米吟醸が塩味の和食全般に寄り添うのに対し、超辛口は脂を断ち切る役割で輝く。粋な肴を相手に独酌するのにも向く一本だ。
四合瓶でおおむね1,540〜1,800円。これだけ明確な辛口設計でこの価格は良心的で、晩酌の「キレ役」として常備しておきたい。甘み寄りの酒に飽きた人、料理の脂をすっきり流したい人に、宝剣の超辛口を強く勧めたい。