

「飛露喜 特別純米 無濾過生原酒」は、廣木酒造本店の名を一躍全国区へ押し上げた原点とも言える一本。九代目・廣木健司氏が無濾過生原酒の表現で蔵を再興した経緯から、飛露喜を語るうえで外せない年1回前後の限定品だ。同じ「特別純米」を冠する通年品とは、火入れの有無・濾過の有無で根本から仕立てが異なる。
香りはバナナや完熟果実を思わせる生酒由来のフレッシュな立ち香。濾過していないぶん、米のニュアンスや発酵感がそのまま残り、グラスに鼻を近づけた瞬間から濃厚さが伝わってくる。火入れの特別純米が「整った静けさ」なら、こちらは「搾りたての荒々しい生命感」が前面に出る。
味わいは無濾過生原酒らしい厚みが主役。アルコール17度の原酒由来のボリュームと、酸度1.3に支えられた骨太な旨みが口中を満たす。日本酒度+1.5の表記以上に甘み・旨みが豊かで、ボディは濃醇寄り。キレよりも余韻の長さで魅せる設計で、一口で「飛露喜の原点はこれか」と納得させる説得力がある。
ペアリングは脂とコクのある料理。サシの入った刺身、豚の角煮、鴨ロース、すき焼きなど、濃い旨みを持つ皿にこそこの原酒は映える。淡麗な料理だと酒が勝ちすぎるので、料理側にも厚みが欲しい。よく冷やした8〜10℃が基本だが、開栓後に常温へ寄せると甘みがふくらみ、表情が変わるのも生原酒の面白さだ。
価格は四合瓶で4,000〜7,000円が実勢。要冷蔵・生酒のため流通とともに品質が動きやすく、冷蔵管理の確かな酒販店で買い、抜栓後はできるだけ早く飲み切りたい。入手難度は飛露喜の中でも高い部類だが、この蔵の出発点を体感したいなら追う価値のある限定酒だ。