

白牡丹酒造は延宝3年(1675年)創業、酒都・西条でも最古の蔵として知られる。300年以上にわたって地元で日常酒として飲まれてきた歴史を持つ蔵で、その代表的な純米吟醸が今回の一本だ。華やかさで攻める現代的な吟醸とは方向性が異なり、軟水仕込みの柔らかさと米の旨みで勝負する、いかにも広島らしい酒という印象を受けた。
日本酒度+1という数字どおり、味の重心は中庸からわずかに甘み寄り。グラスに注ぐと立ち香は穏やかで、山田錦由来の落ち着いた米の香りがある。口に含むと、まず柔らかな甘みと旨みがゆっくり広がり、酸度1.6が全体を引き締めて、後半は穏やかに収束していく。とがった部分がなく、終始まるい。
このタイプは温度で大きく表情を変える。冷酒では甘みと旨みが控えめに整い、常温に戻すと米の旨みがふくらむ。本領を発揮するのはぬる燗(40〜45℃)で、温めると甘みと旨みが一段開き、酸が和らいで丸みが増す。燗にして真価が出る純米吟醸は意外と少ないので、燗酒派にはありがたい一本だ。
合わせるなら、出汁を生かした和食が間違いない。筑前煮や煮魚、湯豆腐、出汁巻き卵といった家庭の食卓に並ぶ料理と寄り添い、酒だけが前に出ることがない。脂の強い洋食よりも、醤油と出汁の世界で力を発揮するタイプだ。
四合瓶で1,500円前後と手に取りやすく、毎日の晩酌に据えても財布に優しい。流行の華やかな吟醸に少し疲れたとき、出汁と燗で落ち着いて飲みたいときに思い出したい、地に足のついた一本だと感じた。