

「純米生酛 ひやおろし」は、定番の純米生酛を一夏蔵で寝かせ、秋口に出荷する季節限定版だ。火入れを一度だけにとどめて瓶詰めし、夏越しの熟成でまろやかさを乗せている。同じ五百万石主体・65%(超扁平精米)の生酛でも、通年の定番が「仕込みたての骨太さ」なら、こちらは「ひと夏ぶんの丸み」が乗った別物として楽しめる。
香りは穏やかで、熟成由来の落ち着いた含み香。口当たりには透明感があり、上品にまとまった旨みが静かに広がる。日本酒度+3、酸度1.6。数字は定番に近いが、熟成で角が取れているため、辛口でありながら刺々しさがない。生酛の酸が秋の食材の脂をすっきり流してくれる。
ひやおろしの魅力は、出荷時期と料理の旬が完全に重なることにある。冷やでも旨いが、この銘柄はやはりぬる燗が映える。温めると熟成した旨みが膨らみ、肌寒い季節の食卓にちょうどいい温度感になる。毎秋これを待つファンが少なくない理由がよく分かる。
ペアリングは秋の味覚そのもの。秋刀魚の塩焼き、きのこの炊き込みご飯、里芋の煮っころがし、走りの牡蠣。生酛の酸とコクが、滋味深い秋の和食と素直に響き合う。
価格は四合瓶で1,400〜1,700円と手頃。通年の純米生酛を知っている人ほど、その熟成版という位置づけが楽しめる季節の一本だ。秋に見かけたら確保しておきたい。