

「皆伝」は、生酛造りの技を伝授しきった——その名の通り、大七酒造の純米吟醸として安定した実力を持つ銘柄だ。五百万石を超扁平精米で58%まで磨き、生酛で仕込んでいる。65%磨きの定番「純米生酛」と50%磨きの大吟醸群のちょうど中間に位置づけられ、グレード設計上の橋渡し役を担う一本だ。
香りは吟醸らしい清涼感がありつつ、生酛由来の落ち着きがある。日本酒度+2、酸度1.3。酸度は同蔵の中ではやや低めで、その分すっきりとまとまっている。定番「純米生酛」(酸度1.6前後)の濃さが少し重いと感じる人には、こちらの方が軽やかで親しみやすい。
皆伝の持ち味は、吟醸の端正さと生酛のコクのバランスにある。冷やせばキレの良い食中酒として働き、ぬる燗にすれば旨みがふくらむ。香りが穏やかなので燗にしても崩れず、「お燗で美味い純米吟醸」という大七らしい立ち位置を保っている。
ペアリングは、繊細で塩気の効いた料理。天ぷら、塩の焼き鳥、出汁巻き卵、白和え。酸が控えめな分、素材の味を邪魔せず後味を整えてくれる。
価格は四合瓶で2,600〜2,900円。純米大吟醸クラスに手を伸ばす前に、大七の吟醸帯を試すなら最適な価格帯だ。定番の生酛純米から一段上げたい人に勧めたい。