

岐阜県土岐市駄知町の千古乃岩酒造は、硬度7という超軟水を仕込み水に使う蔵で、その水質がそのまま酒質に表れる。「辛口純米酒」は日本酒度プラス5のキレのある設計ながら、軟水ゆえの柔らかい口当たりが同居していて、辛口酒にありがちなトゲトゲしさがない。日常の食卓に置きたくなる素直な純米だ。
注ぐと、ほとんど無色に近い清らかな酒色。香りは控えめで、炊き立ての米と、ほのかに白い花のようなニュアンスがある程度。これは欠点ではなく、食中酒としての設計意図そのもの。料理の香りを邪魔しないことを最優先した、引き算の酒だと感じる。
一口目はさらりと軽く、軟水仕込みらしい柔らかさで滑り込んでくる。中盤で米の旨みがほんのり顔を出し、後半は日本酒度プラス5のキレが効いて、すっと喉の奥へ消えていく。余韻を長く残さず、すぐ次の一口、次の料理へと誘う。レーダーでキレを最大、香りと甘みを低めにしたのは、この「軽快さと潔さ」がこの酒の核だから。
温度は冷酒(8〜10℃)でキレを際立たせるのが基本だが、軟水ゆえに常温でも口当たりが崩れない。むしろ少し温度が上がると米の旨みが穏やかに膨らみ、淡麗一辺倒ではない奥行きが見えてくる。冷やからぬる燗まで幅広く対応する、扱いやすい一本だ。
ペアリングは繊細な和食全般。白身魚の刺身、冷奴、塩で食べる天ぷら、鶏の塩焼き。素材の味を立てたい料理にすっと寄り添い、酒だけが主張しすぎない。四合瓶で1,500〜1,800円という価格帯も日常使いにちょうどよく、辛口だが飲み疲れしない晩酌酒として常備しておきたい。