

南アルプス・甲斐駒ヶ岳の伏流水で知られる名水の里・白州。その地で1750年から続く山梨銘醸の定番純米が「風凜美山」だ。価格は四合瓶でおよそ1,100〜1,500円と、毎日の食卓に置ける価格帯。派手さで売る一本ではないが、グラスに注いだ第一印象から「水のきれいな蔵の酒」という清潔感がある。色はごく淡く、立ち香も穏やかで、構えずに飲み始められる。
香りは控えめながら、炊きたての米を思わせる柔らかな含み香と、わずかに青リンゴのような爽やかさが混じる。精米歩合70%の純米らしく、吟醸香で主張するタイプではない。鼻に抜けるのは硬さのない、丸みのある香りで、白州の軟水で仕込んだ酒に共通する「角の取れた」印象がここでも出ている。
味わいは、口当たりが軟水らしく柔らかく、すっと舌に乗る。中盤で米の旨みがほどよく広がり、後半は日本酒度+3前後を思わせるやや辛口の輪郭で、もたつかずに切れていく。仕込み水が軟水のためか、辛口でも刺々しさがなく、旨みと切れが綱引きせずに同居しているのが好ましい。温度帯の許容範囲が広く、8〜12℃の冷酒では爽やかさが、常温では米の旨みが、ぬる燗(40℃前後)では柔らかさと余韻が膨らむ。一本で温度を変えながら楽しめる、食中酒の良さがある。 (編集部注:日本酒度・酸度は蔵元非公開のため、味の傾向から推定した代表値。原料米・精米歩合・度数は蔵元・販売店表記に基づく確定値)
ペアリングは和食全般、とりわけ素材の味を活かした料理と相性が良い。白身魚の刺身、塩で食べる天ぷら、焼き魚、湯豆腐。出汁や塩でまとめた料理だと、酒の柔らかさとキレが料理を押し流さずに寄り添う。逆に味の濃いソース系や強い香辛料には旨みが負けやすいので、淡い味付けに合わせるのが本領発揮の使い方だ。
価格と内容のバランスは良好で、編集長 丸山としては「常備しておける食中の純米」として推せる一本。獺祭や久保田 萬寿のような華やかさ・贅沢さを求める酒ではなく、白州の名水の柔らかさを毎日の食卓で味わうための酒、という位置づけ。冷やしても燗にしても破綻しない懐の広さがあり、日本酒を食事と一緒に楽しみたい人の最初の定番として勧めやすい。