

愛知県西尾市の山崎合資会社が手がける「奥」は、奥三河で契約栽培された酒米「夢山水」を全量使った純米吟醸。アルコール度数18度という原酒設計で、近年の軽快な吟醸とは一線を画す。グラスに顔を寄せると、青リンゴとメロンの間にあるような香りに、米由来の蜜っぽさが重なってくる。
口に含んでまず驚くのは、とろみと表現したくなる粘性のある質感だ。日本酒度は+2と数字上は中庸だが、酸度1.8がしっかりあるため、甘さに流れず旨みの輪郭が立つ。18度のボリュームを酸が引き締めているイメージで、薄甘い吟醸とは別物。中盤で夢山水の旨みがぐっと膨らみ、後半は熟したフルーツの余韻が長く残る。
飲み方は冷酒(10〜13℃)が基本だが、この酒は常温まで戻しても崩れない。むしろ温度が上がると米の甘みと厚みが顔を出し、印象が変わるのが面白い。度数が高いので一気に飲むより、小さめの盃でじっくり。ロックにしても薄まりすぎず楽しめるタイプ。
濃い味付けと正面からぶつけたい。牛すじの煮込み、うなぎの蒲焼き、豚の角煮といった甘辛い料理に対して、酒の旨みと酸が拮抗して双方を引き立てる。熟成チーズのコクとも好相性だった。逆に淡白な刺身だと酒が勝ってしまう。
四合瓶で2千円前後と、この内容にしては手に取りやすい価格。軽い酒に物足りなさを感じ始めた人に試してほしい一本で、家飲みのローテーションに「濃醇な個性派」枠として置いておく価値がある。