

「EAU DU DESIR(オウ・ド・デジール)」は、フランス語で「希望の水」を意味する、醸し人九平次の山田錦ラインのスタンダードにあたる純米大吟醸。萬乗醸造が自社栽培にこだわる兵庫県西脇市黒田庄産の山田錦を50%まで磨いて仕込む。九平次というブランドを世界に知らしめた、いわば顔となる一本だ。
別誂が35%磨きの最上位に位置するのに対し、このEAU DU DESIRは50%磨き。米をギリギリまで削らないぶん、山田錦そのものの旨みと骨格がしっかり残る。グラスに注ぐと白桃や洋ナシを思わせる上品な吟醸香が立ち、口に含むと果実味と心地よい酸が一体となって広がる。香りで魅了し、味わいで納得させる構成は、まさにワインの世界観に通じる。
冷酒(8〜12℃)で、白ワイン用のチューリップ型グラスに注ぐのが九平次流。和食に縛られず、白身魚のカルパッチョやフレッシュチーズ、鶏のソテーといった洋食寄りの料理と合わせると、酸が脂を切りながら食事を引き立てる。グラスの選び方ひとつで印象が大きく変わるので、ぜひワイングラスで試してほしい。
九平次のラインは米と精米歩合で性格が大きく分かれる。同じ山田錦でも上位のhumanは45%磨きでより緻密に、別誂は35%磨きで凝縮感を極める。雄町を使うSAUVAGEはより野性味のある旨みが前に出る。その中でEAU DU DESIRは、価格と味のバランスが最も取れた「最初の九平次」として薦めやすい立ち位置にある。
価格は四合瓶で3,500〜4,500円前後。特約店流通の銘柄だが、別誂やhumanに比べれば手に取りやすく、九平次の哲学を知る入口として最適。日本酒とワインの境界を曖昧にする、現代派の代表作だ。