
豊田・猿投の浦野合資会社が造る「菊石」。1864年創業の蔵で、この純米酒は愛知県産の酒米・夢吟香を使った地元色の濃い一本。編集部としては、夢吟香=柔らかいというイメージを少し裏切る、しっかり辛口に仕上げた設計に手応えを感じた。
香りは穏やかで、グラスを近づけても主張は弱い。含むと夢吟香らしいふくよかな米の旨みがまず広がり、香りより味で語るタイプだとすぐ分かる。
日本酒度+4前後の辛口寄りで、前半の旨みを酸とキレが素早く回収していく。後味は驚くほど早く消え、盃が進む。甘さに寄せず端正に切る方向で、脂のある料理や濃い煮物の口直しとして機能する。夢吟香の柔らかさと辛口設計のバランスが、この酒の個性。
冷やから常温が扱いやすく、ぬる燗にすると旨みがふくらんで角が取れる。鰻の白焼きや豚の角煮、ぶり大根といった甘辛・濃厚な料理に合わせると、キレの良さが効いて重さを流してくれる。
四合瓶で1,400〜1,600円。豊田の地酒として地元に根づいた銘柄で、辛口の食中酒を探している人に薦めやすい。派手さはないが、毎日の食卓を支える実直な純米。