菊姫 鶴乃里 山廃純米
石川県

菊姫 鶴乃里 山廃純米

蔵元: 菊姫合資会社
山廃純米 原料米: 山田錦 精米歩合 65%
★ 4.7
★★★★☆
編集長 丸山評価

スペック

日本酒度
+3
酸度
1.8
アルコール度数
16%
価格目安
2,200〜2,600円
味わいレーダーチャート
香り甘みキレ余韻個性
4象限ポジション
辛口甘口淡麗濃醇 爽快・キレ系穏やか・優しい系どっしり辛口芳醇・甘口

料理ペアリング

鴨ロース すき焼き 鰤の照り焼き 熟成チーズ

この銘柄のタグ

編集長レビュー

編集長 丸山
日本酒愛好家・延べ1000銘柄を試飲

菊姫の山廃ラインのなかでも、定番の「山廃純米」より一段上に位置づけられる年一回の限定酒が、この「鶴乃里」だ。兵庫県三木市吉川町・特A地区産の山田錦を100%、65%まで磨いて仕込み、半年以上の熟成を経て毎年10月に出荷される。2007年の第1回インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)SAKE部門で「チャンピオン・サケ」に輝いた一本で、菊姫を世界に知らしめた看板でもある。同じ蔵の「山廃純米」が精米70%・日本酒度ほぼ中央のどっしりした男酒だとすれば、鶴乃里は65%まで磨きを進めた分、輪郭がやや締まり、酸とキレに方向性を持たせた仕上がりになっている。

色合いは淡い山吹色。グラスを近づけると、山廃酛由来の乳酸を巻き込んだ複雑な含み香に、熟成由来の穀物やナッツのトーンが重なる。派手な吟醸香で前に出るタイプではなく、温度が上がるにつれて香りの層がほどけていく、後追い型の構成だ。冷えている段階では香りはおとなしく、慎重に全貌を隠している。

味わいは濃醇でありながら、定番山廃よりも輪郭がシャープ。一口含むと米の旨みが厚く広がり、それを酸がきりりと引き締める。日本酒度は非公開だが、蔵の特性とこの磨きを踏まえると、やや辛口寄りの+3前後とみるのが妥当だろう(編集部推定)。後半はだれることなく長い余韻へとつながり、飲み込んだあとも旨みの残響が続く。ぬる燗(45℃前後)に振ると米の旨みと酸が最大限に膨らみ、IWCで世界の審査員を唸らせた骨格の太さが立ち上がってくる。

ペアリングは、しっかり味の付いた肉料理が好相性。鴨ロースやすき焼き、鰤の照り焼きといった甘辛い味付けに、山廃の酸が脂とコクを受け止めて口中をリセットしてくれる。熟成由来のニュアンスがあるぶん、ハードタイプのチーズと合わせても面白い。繊細な白身魚より、旨みと脂のある皿に寄せたい一本だ。

価格は720mlで2,200〜2,600円前後。定番の山廃純米より一段高いが、限定出荷・追加熟成・世界チャンピオンという背景を考えれば納得の水準だ。淡麗辛口とも華やかな吟醸とも違う、山廃の旨みと酸で押し切る世界。定番山廃で菊姫の地力を知ったら、次の一本として鶴乃里へ進む——そんな順路を編集長・丸山も推している。