

愛媛県西条市の成龍酒造が醸す「伊予賀儀屋(かぎや) 純米吟醸 黒ラベル」は、地元・愛媛が育てた酒米「松山三井」を50%まで磨いた純米吟醸。賀儀屋は「料理を引き立てる食中酒」を一貫したコンセプトに掲げる銘柄で、この黒ラベルはその中核を担う通年商品だ。アルコール度数は版によって15度前後〜17度台まで幅があるため、本稿では流通量の多い火入れ標準版(15度・日本酒度+3・酸度1.6)を基準にしている。
香りは派手すぎず、上立ち香に淡い果実とほのかな乳酸系のニュアンス。グラスに鼻を寄せると、吟醸らしい清らかさの奥に米の気配がしっかり残っているのが分かる。一口含むと、松山三井由来のやわらかな旨みがふわりと広がり、そこに穏やかな酸が骨格を与える。
中盤から後半にかけて、旨みがだれることなく日本酒度+3らしいキレへつながっていく。後味はクリーンで、余韻にほんのり旨みの尾を引くのが心地よい。香りで魅せるのではなく、飲み進めるほど料理が進むタイプ。冷酒(8〜12℃)で輪郭が引き締まり、常温寄りにすると旨みのふくらみが増す。
ペアリングは食中酒の本領が出る。白身魚の刺身、焼き魚、塩味の天ぷら、鶏肉料理。瀬戸内の魚介と合わせると、酸とキレが脂を流して口中をリセットしてくれる。和食を中心に、味付けの濃淡を問わず幅広く寄り添う。
四合瓶で1,600〜1,900円前後と、純米吟醸としては良心的な価格。華やかな香りを主役にする蔵が増えるなか、あえて「料理の隣」に徹する設計は明確な個性になっている。愛媛の食中酒を知るうえで、基準にできる一本。