

出雲市今市町の旭日酒造は、1869年(明治2年)創業の蔵だ。看板銘柄「十旭日(じゅうじあさひ)」は、150年を超える歴史を持ちながら、近年は生酛造りや熟成への取り組みで通好みの支持を集めてきた。この純米 五百万石は、島根県産の五百万石を100%使い、精米歩合70%で醸した一本。約1年の熟成を経て出荷される、骨太な食中酒だ。
香りは穏やかで、華やかな吟醸香はほとんど立たない。冷えた状態では蒸した米や穀物を思わせる落ち着いた含み香で、熟成由来のわずかなコクのニュアンスも感じ取れる。香りで楽しむ酒ではなく、口に含んでからの旨みと辛さで勝負するタイプだと、最初のひと嗅ぎで分かる。
味の核は、しっかりした米の旨みと、それを断ち切る強い辛口のキレ。日本酒度+8、酸度1.9という数字どおり、後半でぐっと辛さが立ち、余韻はキリッと締まる。70%の精米歩合が残す米の厚みと、熟成が乗せた深みが土台にあり、それでいて間延びしない。編集長の丸山が推すのはやはり燗だ。ぬる燗から熱燗(40〜50℃)にかけて米の旨みが膨らみ、辛さが角を取って一層飲み心地が良くなる。冷やでも辛口の輪郭は楽しめるが、この酒は温めてこそ本領が出る。
合わせたい料理は、温かくコクのあるものが断然向く。焼き魚、出汁の効いた煮物、おでん、もつ煮込み。強い辛口とふくらむ旨みが、醤油や味噌の濃い味付けを受け止め、脂を流してくれる。繊細な前菜より、家庭の煮込みや鍋ものと向き合わせたいタイプだ。
価格は720mlで実勢1,400〜1,700円ほど(※一升瓶の流通価格から換算した目安。SKUにより変動)。熟成を経た辛口純米としては手頃で、燗で映える日常酒を探している人に勧めやすい。淡麗辛口とは違う、出雲の「熟成・辛口・燗映え」の純米として、冷蔵庫に一本常備して寒い季節に燗をつけたい酒だ。