

義侠の頂点に立つのが、この「慶(よろこび)」純米大吟醸。兵庫県東条特A地区の山田錦を40%まで磨いた純米大吟醸原酒のうち、もっとも良い部分である「中汲み(中取り)」だけを取り分け、3年以上、ものによっては7年に及ぶ低温熟成を経て、複数年のものをブレンドして仕上げる。総米750kgという小仕込みで、まさに義侠の技と思想が凝縮された一本だ。
精米40%という磨きは、純米吟醸 山田錦60や特別純米「縁」の60%、純吟50とは一線を画す。だが慶の主役は華やかな吟醸香ではない。長期熟成で生まれた黄金色の酒色と、複雑にとろみを帯びた旨み、そして果てしなく続く余韻にある。磨きで軽くするのではなく、磨いた酒をあえて寝かせ、厚みを足していく――義侠らしい逆説的な造りだ。
日本酒度+2前後、酸度1.2、アルコール16〜17度。スペックは穏やかに見えるが、熟成によって甘み・旨み・酸が一体となり、口の中で何層もほどけていく。冷やしすぎるともったいない。15〜18℃あたりでゆっくり開かせると、熟成香と米の蜜のような甘みが立ち上がる。
合わせるなら、こちらも一段格の高い料理を。鯛の昆布締め、ふぐ刺し、鴨ロース、熟成チーズ。脂やコク、旨みのある肴と互角に渡り合い、料理を熟成酒の余韻で包み込む。
四合瓶で7,000〜8,000円。義侠の中でも別格の価格だが、磨き・中汲み・長期熟成・ブレンドという手間の積み重ねを思えば納得の一本。蔵の名を冠する「慶」の名にふさわしい、祝いの席に開けたい大吟醸だ。