富久錦 純米
兵庫県

富久錦 純米

蔵元: 富久錦
純米 原料米: キヌヒカリ 精米歩合 70%
★ 4.3
★★★★・
編集長 丸山評価

スペック

日本酒度
+2
酸度
1.5
アルコール度数
15%
価格目安
1,500〜1,800円
味わいレーダーチャート
香り甘みキレ余韻個性
4象限ポジション
辛口甘口淡麗濃醇 爽快・キレ系穏やか・優しい系どっしり辛口芳醇・甘口

料理ペアリング

焼き魚 煮物 おでん 唐揚げ

この銘柄のタグ

編集長レビュー

編集長 丸山
日本酒愛好家・延べ1000銘柄を試飲

兵庫県加西市、北播磨の田園地帯に蔵を構える富久錦の定番「純米」。この蔵は1839年(天保10年)創業で、1990年代から純米酒のみを醸す全量純米蔵として知られる。注目したいのは原料米で、酒造好適米ではなく食用米のキヌヒカリ(加西市産)を主体に、麹米に地元産の兵庫夢錦を使う。「ご飯として食べる米の旨みをそのまま酒に」という発想が、この一本の輪郭を決めている。

グラスに注ぐとごく淡い山吹色。香りは派手な吟醸香とは無縁で、炊きたての白米や蒸し米を思わせる穀物系の含み香が穏やかに立つ。鼻を近づけて初めて分かる控えめさで、香りで主張する酒ではないと最初の一嗅ぎで伝わってくる。

口に含むと、精米歩合70%のキヌヒカリらしいふっくらした米の旨みが舌の中央に乗る。甘さに振り切るのではなく、中盤からじわりと酸が効いてきて、後半はすっとキレていく。蔵が日本酒度・酸度を公表していないため、編集部では飲み口から日本酒度+2前後、酸度1.5前後と見ているが(あくまで推定値)、いずれにせよ「旨みはあるが重くならない」絶妙な着地点に設計されている。冷やでも飲めるが、本領はぬる燗。45℃前後に温めると米の甘みがふくらみ、輪郭が一段とまろやかになる。

ペアリングは家庭の食卓そのもの。焼き魚や煮物、おでん、鶏の唐揚げといった日常の和惣菜に、嫌味なく寄り添う。出汁や醤油の効いた料理に対して、この酒の米の旨みが下支えとなり、酸が後口を整えてくれる。繊細な刺身より、火を入れた温かい料理と合わせたい食中酒だ。

価格は四合瓶でおおむね1,500〜1,800円(実勢)。全量純米蔵が地元の食用米で醸す「ちょっと贅沢な日常酒」というコンセプトに、価格がきちんと見合っている。華やかさで売る酒ではないが、毎晩の晩酌で温めて飲むほどに地力を感じる。淡麗辛口とも濃醇旨口とも違う、播磨の田んぼの風景が浮かぶような実直な純米として、編集長は常備酒の候補に推したい。