

田酒というと、まず思い浮かぶのは燗映えする力強い純米だが、その同じ蔵が山田錦を四割五分まで磨いて造るのがこの一本。普段の田酒の「米の旨み一辺倒」とは表情が違い、上品さと厚みを両立させた純米大吟醸だ。
香りは華やかすぎず、リンゴや白桃を思わせる落ち着いた吟醸香。45%まで磨いた山田錦らしく、口当たりは丸くなめらかで、雑味のない澄んだ旨みが舌の中央を通っていく。同蔵の特別純米(精米55%)と飲み比べると、輪郭の繊細さがはっきり分かる。
田酒の真骨頂である「キレ」はこのクラスでも健在で、膨らんだ旨みが最後はすっと引いていく。甘ったるさが残らないので、冷やしてゆっくり飲んでも飲み疲れしない。15℃前後のやや冷えた温度帯がいちばん表情豊か。
ペアリングは、味の濃い料理よりも素材の出汁を活かした和食が合う。白身魚の刺身、揚げたての天ぷら、出汁巻き卵、湯豆腐。酒の繊細な旨みと料理の旨みが重なって、互いを邪魔しない。
四合瓶で実勢3,800〜5,000円。毎年特定の時期に限定出荷され、特約店でも一人一本に制限されることが多い。田酒の「磨きの世界」を知る入口として、まず手に取りたい純米大吟醸。